涼感

日本は暦の上では立秋、秋の気配が感じられるところだが、列島はようやく長かった梅雨が明けていよいよ夏本番という所 、お盆休みも近ずいて本来なら帰省ラッシュ等で慌ただしい頃だが今年は家で我慢の夏休みになりそう。本来なら自分たちもこれから一年で一番忙しい時期を迎えるはずだったが、今年は残念ながらいつものにぎやかな旅行客のシーズンは見送られてしまってた。残念だが仕方ない。


少しでも家で涼しさを感じたいときには、風鈴の音がさわやかな気持ちにさせてくれる。軒下に吊るした風鈴が風に吹かれながら優しく揺れて、その澄み切った音色で涼しさを届けてくれる夏の風物詩だが、今年もまたその厳しい暑さのみぎりを優しい風の音で和らげてくれる。耳にするだけで何故だか涼しさが伝わる不思議な風鈴、変わる時代の中でも残していきたい暮らしの知恵だ。


海外の風鈴は日本とはちょっと違って、楽器のような音色の美しさを表現する意味合いの方が強い。調律によって成り立つ金属棒の菅を調節しながら何本も並べて、異なった音同士を共鳴させることで美しい旋律の音色を作り出す、よくウインドチャイムと呼ばれている。アメリカのウッドストック社のウインドチャイムは特に有名かも。


ここクイーンズランドでもこだわりのウォークマンシップで、今でもこのウィンドチャイムを作り続けている工房がある。自然の中に感じるブッシュサウンドを木のチャイムを使ってそよ風の翼を伝えたいというコンセプトを掲げた「TUBULAR BELL 」というサンシャインコーストの田舎町ヤンディナという所に工房を構える言わずと知れたウィンドチャイムの名工だ。


ハ長調のコードを木の棒を調律しながら、風によって重なり合った音色を美しいハーモニーで奏でるこのチャイムは、コンピューターを使わずに全て手作業で作られる。代表的なウエストミンスター(祝宴の調べ)の他、ブルース調のチャイムや5つのメジャーコードの旋律を調和したマジェスティックというチャイムの傑作も揃える。日本の風鈴とはちょっと違った夏の涼しさが味わえるかも?


古来、日本では強い風は流行り病や邪気などの災いを運んでくると言われて来た、この災いの風を風鈴が知らせてくれると。また、気温の高い暑い時期は伝染病が流行りやすかったことから、魔除けの意味を持って飾られたという説もある。さらに音が似ていたことからスズムシが鳴く夏の間、風鈴は仕舞われたという趣のある話も。我々に涼しさを届けてくれる夏の風鈴、スズムシが鳴くこの季節だけでもさわやかな音色の下でコロナのことを忘れたい。